十分な引継ぎがないまま、いきなり会社の総務担当になったある日のこと。 上司から「〇〇さんの結婚祝い、よろしく」とだけ言われ、会社の備品棚にあった祝い用の封筒を手に取ったものの、私の思考は完全に停止しました。
「祝い袋なんて、全部同じデザインじゃないの…?」
この時の私は、そこに「結び切り」と「蝶結び」という、絶対に間違えてはいけない重大な違いがあることすら、知らなかったのです。 結婚式に呼ばれているわけじゃない、職場でサッと渡すだけ。だからこそ、「どれくらいフォーマルにすべきか」という、さじ加減が全く分からず途方に暮れてしまいました。
この記事では、そんな過去の私と同じように悩んでいる「ひとり総務」やバックオフィス担当者のあなたのために、会社として慶弔見舞金を出す際の封筒の選び方からスマートな渡し方まで、失敗しないための全手順を、私の経験を元に徹底的に解説します。
そもそも会社の慶弔見舞金とは?
まず基本ですが、慶弔見舞金とは、従業員やその家族に起こったお祝い事(慶事)やお悔やみ事(弔事)に対して、会社が福利厚生の一環として支給するお金のことです。会社によって規定は様々ですが、一般的には結婚祝金、出産祝金、傷病見舞金、弔慰金などがあります。
【シーン別】封筒の選び方と表書き

いざという時に一番焦るのが、この封筒選びです。かつての私は、恥ずかしながら祝儀袋のデザインはどれも同じだと思い込んでいました。しかし、ここには明確なルールがあり、一度間違えると大変な失礼にあたる可能性があります。
「うちの会社、そんな立派な祝儀袋じゃなくて、シンプルな封筒だけど大丈夫?」と不安に思う方もいるかもしれません。結論、全く問題ありません。大切なのは袋の豪華さより、書き方と心です。ここでは「一般的な祝儀袋」と「シンプルな印刷タイプの封筒」、両方のパターンを解説します。
結婚祝い・出産祝いの場合
- 一般的な祝儀袋の場合: 水引は、結婚祝いなら紅白か金銀の「結び切り」(一度きりの意味)、出産祝いなら紅白の「蝶結び」(何度あっても嬉しい意味)を選びます。表書きはそれぞれ「御結婚御祝」「御出産御祝」です。
- シンプルな印刷タイプの封筒の場合: すでに水引が印刷されているものがほとんどです。目的に合ったもの(「御祝」「御結婚御祝」など)を選びましょう。
お悔やみ(弔事)の場合
「のし」がついていない、白黒か双銀の水引の「不祝儀袋」を使います。水引は「結び切り」です。表書きは、宗教が不明な場合は「御霊前」としておけば失礼にあたりません。
【完全解説】会社の封筒の書き方3つのポイント

- ①表書き(目的): 水引の上段中央に、「御結婚御祝」などを名前より少し大きめに書きます。
- ②会社名と代表者名: 水引の下段中央に代表者名、その真上に小さく役職、名前の右側に少し小さく会社名を書くのが丁寧です。
- ③中袋の有無: 中袋がある場合は表面に金額(金壱萬円など)、裏面に会社住所・会社名を書きます。中袋がないシンプルな封筒の場合は、封筒本体の裏面の左下に、住所と金額を書きましょう。
【二度と迷わない】総務の時短と、個人情報保護を両立する仕組み化
私が一番後悔したのは、数ヶ月後にまた同じ作業が発生した時、やり方を忘れてまた一から調べてしまったことです。 ただし、ここで一つだけ注意点があります。完成した封筒の写しには、宛名となる従業員の氏名、つまり「個人情報」が含まれています。これをそのまま共有フォルダに入れるのは、セキュリティ上、望ましくありません。
そこで、私が推奨するのは「個人情報をマスキングした、汎用テンプレート」を作って保存する方法です。
手順は簡単です。完成した封筒を一度コピーしたら、宛名の氏名の部分だけを、修正テープや黒いペンで塗りつぶします。 その状態のものを、改めてスキャンまたはPDF化するのです。(PDF編集ソフトで上から黒い四角を被せるだけだと、元に戻せてしまう可能性があるので、一度紙に出力して物理的に塗りつぶすのが最も安全です。)
そして、「【慶弔】結婚祝儀袋_テンプレート_社名のみ.pdf」のようなファイル名で、誰が見ても分かるようにして共有フォルダに保存します。 こうすることで、個人情報を保護しつつ、未来の自分や後任者が二度と迷わないための、最高の「社内マニュアル」が完成します。
【誰が渡す?】職場で渡すタイミングと、スマートな伝え方
慶弔見舞金を「誰が渡すか」は、会社の規模や文化によって変わるため、意外と悩みますよね。 社長が常に社内にいて、社員との距離が近い会社であれば、社長から直接渡すのが最も丁寧です。 一方で、社長が不在がちであったりして、総務担当者が代理で渡すケースも非常に多いです。私も、基本的には代理で渡すしかありません。
もしあなたが迷ったら、まずは直属の上司に「これは、社長と私、どちらからお渡しするのが良いでしょうか?」と一度確認するのが、最も安全で確実な方法です。 その上で、ご自身で渡すことになった場合は、相手が忙しくなさそうな時間帯を見計らって、「〇〇さん、おめでとうございます。社長からです」と、あくまで社長からの預かりものであることを伝えて渡すのがスマートです。
ひとり総務がよく悩むQ&A
- Q. お札は新札じゃないとダメ? A. お祝い事には新札が望ましいですが、急な場合、折り目のない綺麗なお札(ピン札)でも失礼にはあたりません。逆にお悔やみでは新札は避けましょう。
- Q. 金額の漢字は、旧字体の「圓」を使うべき? A. 私自身、今でも「本当に失礼じゃないだろうか?」と少し不安になることがあります。ですが社内向けであれば、分かりやすさを優先して「円」を使っても問題ないと考えています。私がこれまでこの方法でトラブルになったことは一度もありません。もちろん、会社の文化にもよるので最終的にはご自身の判断でお願いしますね。
- Q. 字が汚いのがコンプレックス…。手書きに自信がありません。 A. すごく、わかります。そこで実践しているのが「今あるツールの徹底活用」です。会社にあるゴム印の、不要な部分に付箋を細く切って貼り、写らないようにして、必要な部分だけ押すんです。そして、どうしても手書きが必要な部分だけ、ゆっくり丁寧に書く。正直、自分でも上手な字だとは思いませんが、このやり方でクレームが来たことは一度もありません。 頼れるものには頼りましょう。
まとめ
会社の慶弔見舞金業務は、細かいルールが多くて大変ですよね。この記事が、あなたの「ひとり総務」としての戦いを、少しでも楽になる情報を載せれるようになりたいです。

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